特集
2023.7.4
工学部 写真工学科卒業生 新田 樹さんが、第47回「木村伊兵衛写真賞」、第31回「林忠彦賞」をW受賞
新田 樹(にった たつる)
木村伊兵衛写真賞と林忠彦賞のW受賞おめでとうございます
この度は、「木村伊兵衛写真賞」、「林忠彦賞」を受賞することができ、光栄です。自費で制作した作品なので、選出されるとは思いもしなかったので驚いています。
新田さんの写真への想い
私がはじめて写真に触れたのは、母のカメラを借り、家の窓から見える背炙山(せあぶりやま)を撮影したときです。きれいに撮れた写真を褒めてもらい、それから興味をもつようになりました。大学在籍時は報道写真部のサークルに属し、「伝えるものがある限り」というテーマで学園祭や商業施設で定期的に展示を開催していました。当時は、「ジャーナリスティックな視点は正直じゃない」との考えがあり、自分に正直なものを伝えたいという想いで撮影をしていました。その想いは、いまも変わりません。
受賞作品「Sakhalin(サハリン)」について
今回賞を頂いた「Sakhalin(サハリン)」ですが、私がロシアに興味を持ったきっかけは小学生の頃にラジオで聞いていたモスクワ放送の影響が多分にあります。
就職した写真スタジオから独立後、1996年に撮影の旅をするためロシアに向かいました。新潟空港からウラジオストクまで行き、シベリア鉄道で旅をする途中でサハリンに立ち寄りました。そこで、戦前に日本語教育を受けた朝鮮の人が、たくさんいることにショックを受けました。資料館や博物館で過去を知るのではなく、朝鮮からサハリンに来たという人たちから知る日本の歩み。旅のはじまりに「サハリンで暮らす人たちと日本の歴史」という、大きなテーマに出会ったのですが、その時の私には正面からぶつかっていく自信がありませんでした。それから14年後に再びサハリンに向かうのですが、その14年は私にとって必要な時間であったのかなと思います。
現在、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まりサハリンに行くのが難しい状況です。撮影させていただいた方のご家族や友人に、この本を届けることすらできません。さらにこのテーマを進めるのか、それともここで一度閉じるのか、今でも気持ちの整理がつきません。こうしている間も時間は過ぎていきます。当時の記憶を持たれている方は高齢で亡くなられていきます。時間は待ってはくれません。
後輩たちへ
学生の皆さんはこれから夢に向かって進んで行く中で、悩むことがたくさんあると思います。その様な時は、自分の中に何人かの※メンターを持つといいと思います。あの人だったらどうするだろうと立ち止まり考えることも大切です。
※メンター…仕事上または人生の指導者、助言者の意味。人ではなくても、アニメの主人公など自分の軸になる人物。
木村伊兵衛写真賞とは
林忠彦賞とは
※所属?職名等は取材時のものです。